歯磨きは食後すぐでも良い!?歯磨きのタイミングとは

Q. 歯磨きって食後すぐしていいの?30分待った方が良いの?
A. さっそくですが、答えは食後すぐにしても大丈夫!です。

 

 

歯磨き『食後30分説』とは

「食後30分は歯磨きをしない方が良い」と聞いたことはありませんか?

2010年代前半には一部メディアでこのように報道されていたようです。
この報道の元となった考え方は、
pHの低い酸性の飲料や 発酵性糖質を含む食品を摂取した直後に歯を磨くと、エナメル質が損傷する可能性が高くなるから、30分は歯磨きを避けた方が良い
というものです。

以前より、炭酸飲料・果汁・スポーツドリンクなどの酸性飲料を飲んだ後には、露出した象牙質が軟化すると報告されてきました。
※歯の表面のエナメル質が摩耗すると象牙質が露出することがあります。(知覚過敏)
歯周病や、過度な歯磨き、歯ぎしりや食いしばりなどが原因となります。

また、酸性食品に関わらず、砂糖・ブドウ糖・果糖などの発酵性糖質を含む食品を摂取すると、プラーク(食べカスから発生する最近の繁殖したもの)中のpHが低くなり酸性に傾きます。

pHが低くなると、歯の表面が溶け始めます。(脱灰)

つまり、この状態で歯磨きをすると歯が削れてしまうのでは…と考えてしまう方がいたのでしょう。

 

口の中のpHって?

私たちの口の中は、通常pH6.8~7.0の中性に保たれています。
虫歯菌は酸性を好みますが、食べたり飲んだりするとすぐに口の中は強い酸性になってしうのです。

しかし、口の中の唾液には酸性の状態を中性に戻す機能があります。
食事をする度に口の中は酸性になり、唾液の作用によって中性に戻される訳です。
※このpHの様子がカーブを描くことから『ステファンカーブ』と言われています。

では、食後どのくらいの時間で口の中のpHは中性に戻るのでしょうか。
倉持らの研究によると、酸性飲料を飲む前後のpHの変化をみた実験では、飲んだ1分後には飲む前のpHの平均値付近にまで戻ることが分かったのです。

つまり、30分待たなくても口の中は通常の状態に戻っているので、「歯磨きをしたら歯が削れてしまうかも」と心配する必要はない訳です。

倉持恵美, 遠藤眞美, 竹蓋道子, 小倉千幸, 川面恵梨子, 宮澤裕美, 中村広恵, 堂本直美, 伊藤梓, 宮内知美, 高柳篤史. 酸性飲料を飲用した後の口腔内pHの変化. 日本歯科衛生学会雑誌2013 8(1)211

 

歯磨きのベストなタイミングは?

先ほどのことから、酸性飲料を飲んだ後の酸蝕(歯の表面が溶け出してしまう状態)という観点からは、「飲んだ後30分は歯磨きを避けるべき」とは言えないことがわかりました。

う蝕(虫歯)予防の観点からは、日本口腔衛生学会、日本小児歯科学会、日本歯科保存学会によると、食後早い時間に歯磨きをすることが推奨されています。

歯が削れる心配をする必要もないので、食後はすぐ歯磨きをして大丈夫という訳です。

 

まとめ

私個人の意見としては、メディアが
う蝕(プラーク中の虫歯菌が酸を作って歯が溶けること)と
酸蝕(口の外から入ってきた酸などによって歯の表面が溶けること)を
間違え、広まってしまったのではないか
と考えています。

ここまで、歯磨きのタイミングについて解説してきましたが、歯磨きでより重要なことは適切な磨き方をすることです。
歯ブラシが表面だけをこすっていて汚れに届いていなかったり、逆に磨きすぎによって歯の表面がすり減ってしまったりすることもあります。

適切な歯磨きは、歯並びや歯茎の状態などによって一人ひとり異なります。
自分に合う磨き方や、歯ブラシなどのオーラルケアグッズの選び方を知ることが大切ですよ!
歯科医院でしっかりとプロに診てもらって健康な美しい歯を保ちましょう。

 

参考:高柳篤史, 相田潤, 遠藤眞美, 佐藤涼一, 鈴木誠太郎, 山岸敦(『セルフケア指導 脱! 誤解と思い込み』株式会社創英、2021年、p.72-74)